永遠の仔(四)抱擁 天童荒太

永遠の仔〈4〉抱擁 (幻冬舎文庫)

永遠の仔〈4〉抱擁 (幻冬舎文庫)

梁平と養父母の久々の再会のところでの、刺々しくない梁平や、ぎこちないけれど互いに想い合っているのがわかる会話は、今まで読んできた中で一番温かく、ホッとする場面だった。だからこそ、その直後の奈緒子の死がとても嘆かわしい。せっかく梁平が、自分を受け入れてくれた奈緒子の存在に素直になったというのに。
岸川婦人の告白に、過去や志穂、聡志の死を背負ってしまっている優希にやっと希望がと思ったのだが、そう簡単には救われないところがまたもどかしい。
なるほど、と勝手に納得したのだが、笙一郎が今まで度々言ってきた「資格がない」という理由の1つには、自分がゲイだということもあるのではないか。最後はなんとなくそんな感じを匂わせていたように思った。
1979年の章を読んでいると、優希が自宅に帰る度、明らかにおかしくなって帰ってくるのに、全く気付かないor気付く気配のない病院スタッフにちょっとした苛立ちを覚える。
まり子も子供の頃、押入れに入れられていたというような台詞があって、改めて負の連鎖みたいなものを感じた。